リロケーションとは
転勤などの理由で一時的に長期留守にする自宅を、期間限定で賃貸に出すことを「リロケーション」と言います。リロケーション会社に賃貸借契約や入居者対応などの管理を委託することで、手間なく家賃収入が得られる画期的な空家活用法です。
ここではリロケーションとはどのようなサービスなのか、その歴史や概要について解説しています。
リロケーションとは英語のrelocation(再配置、移転)から来た言葉で、転勤や海外赴任などにより留守になった家を一定期間賃貸に出して管理するサービスのことを言います。
欧米では引越しやビザ取得など転勤に伴う幅広いサービスを提供しますが、日本では転勤している間だけ持ち家を不動産会社が管理するといったケースがほとんどです。
一昔前までは転勤などで留守になる自宅は、大手企業が借上社宅制度を使って他の社員に貸すというケースはあっても、不動産会社を通じて賃貸に出すということはあまり行われませんでした。
なぜなら借地法、借家法、建物保護に関する法律により借り手の保護を再優先にした借家制度があったからです。
以前は一度貸してしまうと貸主から契約更新を拒絶することが困難で、どうしてもという場合は高額な立ち退き料を支払わなければならなかったため、賃貸にするリスクは非常に高いものでした。
ところが2000年に借地借家法が改正され定期借家権が導入されてから状況が一変しました。更新をせずに期限付きで確実に建物等を貸主に明け渡すという契約が可能になったのです。
これにより留守にしてしまう自宅を売却すること無く、期間を限定して第三者に賃貸するリロケーション需要が高まることとなりました。
これほどまでにリロケーションが広まった大きな理由は、借地借家法の改定によって「定期借家」ができるようになった点です。「定期借家」とは契約時に期間を定めて賃貸として活用し、期間が満了となれば契約が完了することです。つまり定期借家があることで、借主から明け渡してもらえるのだろうかという不安を解消し、確実にオーナーの元に自宅が戻るという仕組みが確立されました。
リロケーションという仕組みのイメージに合った法改正が行われたことで、法改正された平成12年以降はリロケーションが急増しています。転勤・海外赴任時に検討されることも多くなっているようです。
基本的にリロケーションのオーナーは海外などの遠隔地に別の居住スペースを設けているため、業務委託による管理がほとんどでしょう。ただ管理委託ではなく、入居者の募集・賃貸借契約の代行・クレーム処理・家賃の督促など賃貸に関係している業務全般を委託するケースが基本となります。もちろん全ての業務を委託することで別途費用は発生しますが、手間がかからないなどのメリットも多く、遠隔地でも安心してリロケーションが行えるでしょう。もちろん業務委託の費用は管理会社・不動産会社によって異なるので、どれほどの料金がかかるのかリサーチしたうえで始めるようにしてください。
項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
---|---|---|
契約期間 | 期間の定めがなく、実質的に長期にわたって継続可能 | 契約時に期間が定められ、満了日に契約終了となる |
更新の有無 | 更新請求権があり、借主が契約更新を求めることが可能 | 原則として更新されず、満了で終了。再契約は新たな合意が必要 |
解約・立退 | 貸主が借主を立退かせるには正当な理由が必要 | 契約終了時は借主は退去義務があり、立退きリスクが高い |
借主の権利 | 安定した居住が可能で、更新請求権により長期利用が期待できる | 契約期間終了後は借主の居住継続が保証されない |
貸主の柔軟性 | 長期契約が前提となるため、貸主の自由な再利用は困難 | 契約期間が明確なため、将来の物件利用計画に合わせやすい |
賃貸借契約には普通借家契約・定期借家契約の2つがあり、それぞれで内容が異なります。普通借家契約は更新が可能な契約となっており、定期借家契約は更新ができない契約です。そのため普通の賃貸の場合、普通借家契約を交わすことがほとんどでしょう。普通借家契約は借主の権利が非常に強く保護されている特徴があり、契約期間の満了時に借主が「更新したい」旨をオーナーに伝えれば更新が可能です。よほどの正当な理由がない限り退去させることはできず、立退料などを支払わなければならないことも。さらにお互いの合意が必要なので、スムーズに退去させるのは非常に難しいでしょう。定期借家契約は更新ができないため、契約期間満了時に賃貸借契約が完了します。そのため正当な理由や立退料も一切必要ありません。
従来のアパートであれば、そもそも契約期間が満了するからと言って借主に退去させる理由はなく、更新を繰り返してもらい長く居続けてもらった方がオーナーにとってもメリットとなります。また借主にとっても更新が可能な普通借家契約の方が安定した暮らしができるでしょう。そのため貸主・借主どちらにとっても普通借家契約の方がメリットが大きいため、普通の賃貸物件は普通借家契約がメインに扱われているのです。
欧米と違って日本のリロケーション会社の多くは転勤中のみ持ち家を賃貸に出してくれることサービスに特化しています。
空き家のまま建物の管理だけを行うケースもありますが、家賃収入が期待できるため、ほとんどは第三者へ賃貸されます。
その際にリロケーション会社は具体的にどのようなサービスを行うのか代表的な項目を整理すると以下のようになります。
サービスの項目や詳細はリロケーション会社や契約内容によって異なりますが、基本的に面倒な手続きや入居者対応などをすべて任せることができるので、家主として大きな負担になることがありません。
もちろん家主としての義務やリスクもありますので契約時にはしっかりと説明を受けることが大切ですが、メリットが多いので今後リロケーションに対する認知度が高まればさらに利用者が増えることが予想されます。
不在期間中でも自宅を貸し出すことで得られる家賃収入は、住宅ローン返済や固定資産税、管理費などの負担を軽減する大きな手段となります。特に短期的に賃料相場が変動しにくい地域では、継続的な収益源として安定感があり、空き家にしたままにするよりも家計の負担を明確に減らせる点が魅力です。
さらに、家賃収入は確定申告の際に不動産所得として計上できるため、経費計上や減価償却制度を活用することで実質的な税負担を抑えながら運用可能です。
人が生活することで定期的な換気や生活排水が行われ、建物内部の結露やカビの発生リスクが抑えられます。
また、定期的な巡回点検やクリーニングを組み合わせることで、外壁や設備の劣化を早期に発見し、長期的な修繕コストを低減できます。
さらに入居者の存在自体が防犯抑止力となり、不在中の空き巣や不法投棄などのリスクを大幅に軽減する効果も期待できます。これにより、オーナーは「何もせず放置」する場合と比較して、維持管理の手間や費用を抑えつつ安心して運用できます。
リロケーションを活用すれば、自宅を手放すことなく資産価値を維持できます。地価が上昇しているエリアでは、売却によって将来的なキャピタルゲインを逃す恐れがあり、長期的な視点では賃貸運用のほうが有利となる場合があります。
また、売却に伴う譲渡所得税や仲介手数料を回避できるほか、将来再び住みたいという希望がある場合でもスムーズに再入居が可能です。こうした資産保有メリットは、中長期的なライフプランや相続対策の観点からも重要な選択肢となります。
定期借家契約や一時使用賃貸借契約はオーナー有利な条件が多い一方、借主を募るためには一般的に相場よりも低い家賃設定が必要になります。
特に短期間の契約や更新無しの運用は借主にとってリスクが大きいため、早期に入居者を確保するためには家賃を下げざるを得ない場合があります。その結果、得られる収益が予想より減少する恐れがあり、ローン返済とのバランスを慎重に検討する必要があります。
賃貸運用では、借主が住宅設備や内装を損傷する可能性があります。原状回復義務は契約条件によって異なり、実際の損傷分まで賠償請求できるかどうかは契約書や保証金の取り扱いに大きく依存します。
万が一トラブルが発生した場合、費用負担の範囲や修繕期間が不確定になるため、修繕費用や保証金の設定、保険加入などでリスクヘッジを講じることが重要です。
住宅ローン控除は「自ら居住する住宅」に対して適用される制度であるため、リロケーション期間中は適用外となるケースがあります。
また、不動産所得が年間20万円を超える場合には確定申告が必須となり、家賃収入から経費を差し引いた課税所得に対して所得税・住民税が課されます。税務面の不明点は税理士など専門家に相談し、事前に収支シミュレーションを行っておくことが大切です。
定期借家契約や一時使用賃貸借契約では、契約期間満了後に自動更新されませんが、オーナーと借主の双方が合意すれば再契約が可能です。解約時には退去立会いや原状回復の確認、保証金の精算など複数の手続きが発生します。
国内外への急な転勤などで帰任予定が流動的な場合は、「再契約時の条件」や「解約予告期間」を契約書に明確に記載し、トラブルを未然に防ぐことが求められます。
以下のような状況でリロケーションを利用することが推奨されます。
転勤や長期の出張、留学などで半年以上家を空ける予定がある場合、家を賃貸に出すことで空き家期間のリスクを避けることができます。これにより、家の維持管理費用を賄うことができるだけでなく、資産としての価値も維持することが可能です。
家を空ける期間が長いと、建物の劣化や不具合が生じるリスクが高まります。リロケーションサービスを利用すれば、プロの管理会社が定期的に建物のメンテナンスを行い、不具合が生じた際の迅速な対応をしてくれます。
自宅を賃貸に出すことで、不在中の住宅ローンの返済費用を賄うことが可能です。また、追加収入としても機能し、経済的負担を軽減することができます。
リロケーションを利用することで、賃貸収入が得られることによる税務上の利点を享受できます。また、専門の管理会社が適切な保険を適用し、万一の事態に備えることができます。
リロケーションサービスが便利な一方で、以下のような状況では利用を見送ることが望ましいかもしれません。
出張や転勤が頻繁にあるが、家に戻る機会が多いという状況では、リロケーションサービスを利用すると自宅を自由に使えなくなる可能性があります。自宅をいつでも利用できるように空けておくべきかもしれません。
賃貸に出すことで生じる可能性のあるリスク、例えば賃借人による家の損傷やトラブルを避けたい場合、リロケーションは適さないかもしれません。また、個人のプライバシーを重視し、他人に住んでもらうことに抵抗がある場合も同様です。
住宅ローンの返済やその他の経済的な理由で家を賃貸に出す必要がない場合、リロケーションの利用を避けて、家を空けたままにする選択肢もあります。この選択により、いつでも自宅に戻ることができ、家のプライバシーとセキュリティを保持できます。
リロケーションは短期の貸出になるため、借りにくいと感じる人が多く、借主が決まりにくいとも言われています。2年ほどで再度引っ越す可能性があると考えてしまい、その手間を考えてしまうのでしょう。ただ、長期契約できるケースや人気のエリアであれば、早期に決まる可能性ももちろんあります。
リロケーションでお願いしたいと思っても、気になるのは費用面ですね。リロケーションサービスの費用は大きく以下の3段階に分けられます。
また、物件オーナー側には固定資産税、都市計画税、所得税、建物修繕費、保険料、減価償却費、その他の租税公課といった費用も発生するため、事前にしっかりと見積もりや打ち合わせを行うことが重要です。
リロケーションにかかわる税金について、簡単にまとめました。リロケーション会社がどのくらい税金がかかるかまとめてくれると思いますが、気になる人は先にチェックしておきましょう。
リロケーションで得た家賃収入には、以下の税金がかかります。
家賃収入は「不動産所得」として扱われ、所得税・住民税の対象になります。ただし、必要経費(管理費、修繕費、ローン利息など)を差し引いた金額が課税対象となるため、経費をしっかり管理することが重要です。
貸し出す部屋が5戸以上ある場合、事業的規模とみなされ、青色申告による控除が受けられる可能性があります。
持ち家を貸し出していても、所有している限り固定資産税の支払い義務は継続します。
住宅を貸す場合、原則として家賃に消費税はかかりません。ただし、事業用として貸し出す場合は消費税が発生するケースもあるため、契約内容を確認しましょう。
住宅ローン減税を受けている場合、マイホームとして住んでいない期間は減税対象外になる可能性があります。リロケーションを始める前に、金融機関や税理士に相談しておくと安心です。
リロケーション会社が入居者を募集する方法としては、「webサイトへの掲載」「提携会社からの募集」「情報誌・フリーペーパー」「集客ネットワークの活用」があげられます。それぞれの募集方法について、詳しく見ていきましょう。
リロケーション会社が入居者を募集するにあたり、最も一般的なのが大手の賃貸ポータルサイトへの掲載です。または、自社のホームページに掲載し、入居者を募集するところもあります。大手の賃貸ポータルサイトは登録ユーザーが多いので幅広く集客できるものの、似たような間取りの物件も数多く掲載されており、ほかの物件との差別化を図りにくいのが難点です。リロケーション会社によっては、豊富な写真や動画で物件の魅力をアピールし、入居者が早く見つかるように工夫しているところもあります。
小さな不動産会社の多くは、不動産の購入希望者または賃貸入居希望者に物件を探す仲介業を専門としています。そういった客付け専門の不動産会社と提携している情報サイトにリロケーション物件の情報を掲載することで、そのエリアの物件を扱っている不動産会社が入居者を集めてくれます。
駅や管理会社の店頭で配布されている住宅情報誌・フリーペーパーへの掲載も、入居者を募集する方法の1つです。気軽に手に取ってもらえる一方で、現在では大手の賃貸ポータルサイトで物件情報を探すのが主流になっています。そのため、アナログな手法となる情報誌・フリーペーパーは、入居者を募集するうえで強力な方法とは言えないでしょう。リロケーション物件の入居者募集においては、住宅情報誌やフリーペーパーを積極的に利用するリロケーション会社は少ないようです。
リロケーション会社によっては、独自の集客ネットワークを活用して入居者を募集しているところもあります。
たとえば不動産事業とは別に中小企業を対象とした福利厚生サービスを提供している会社の場合、豊富な提携先の中小企業の従業員に対し、入居をあっ旋することが可能。物件を必要としているところへピンポイントに情報を流すことにより、効果的に集客できるのが強みです。
webサイトへの掲載や不動産仲介会社への販促活動のほかに、独自の集客ネットワークを活用することで、スピーディーかつ納得いく賃料での成約を目指せるでしょう。そのため、委託するリロケーション会社を探す際は、独自の集客ネットワークを持っているかどうかも確認してみることをおすすめします。
リロケーションとは、転勤をはじめとする都合から一時的に持ち家を空けるようなときに、一定期間だけ家を貸し出すことを指します。家を手放したくはないものの、長い期間空き家にすることで住んでいない家のローンを払い続ける状態は避けたいもの。住んでいない期間は賃料を得て、住宅ローンに充当できるので、近年利用者が増えています。
多くのリロケーションサービスは、不動産会社が管理する物件によるものが一般的。一方で、自分の裁量で持ち家を他人に物件を貸すことも可能です。ただし、海外に拠点を移す場合には、賃貸提供や管理が難しくなるという側面もあります。
リロケーションの借り主は、希望物件を探している最中、一時的に住む家を探している人がメインになります。借りる期間がある程度決まっていることがほとんどで、自分の次の住居が決まり次第退去することになるでしょう。
リロケーションの利用期間には法的な定めがないため、借り主と貸主の間で合意すれば、期間は自由に設定できます。一般的には、短くても半年、長くて数年といったケースが多いようです。もちろん、契約期間中に双方の事情が変わり、契約内容の見直しが行われることもあります。
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