リロケーションとは
転勤などの理由で一時的に長期留守にする自宅を、期間限定で賃貸に出すことを「リロケーション」と言います。リロケーション会社に賃貸借契約や入居者対応などの管理を委託することで、手間なく家賃収入が得られる画期的な空家活用法です。
ここではリスクから考えるリロケーションのデメリットと対応策について解説しています。
リロケーションは留守宅を上手に活用する手段として大変有効なものですが、デメリットが全くないわけではありません。そこで不動産経営という観点からそのリスクについてまとめてみました。
リロケーションは自宅を賃貸に出して家賃収入が得られるのがメリットですが、借主が決まらないと家賃収入はゼロです。長期間借り手がつかず空室の状態が続くと管理費ばかりがかかりマイナス収支になることも考えられます。空室によって生じるリスクをできるだけ避けるためには、借り手の立場から考えて魅力ある物件かどうかをよく見直す必要があるでしょう。場合によっては家賃を下げたり、リフォームするなどして入居を促す方策を立てることが重要になります。
リロケーション物件は空室が続くと収益が減少するため、空室期間を最小限に抑える対策が重要です。まず、地域の家賃相場を調査し適正価格で貸し出すことで入居希望者の確保につながります。さらに、家具や家電を備え付けた物件にすることで、特に短期滞在者や法人向けのニーズに応え、成約率を高めることができます。また、空室期間中の家賃保証を得られる「サブリース契約」を導入するのも安定収益のために有効な手段です。
リロケーション会社によっては一括借り上げ(サブリース)をして空室保証をするところもありますので、空室リスクがどうしても気になるという場合は契約時に相談するとよいでしょう。会社選びのときにぜひ注目してみてください。
入居者が決まって契約をしたとしても、期日までに家賃を支払ってもらえないケースがあります。オーナーとしては見込んでいた家賃収入を得られないことになりますので発生すれば大きなリスクとなります。
もちろん契約違反なので法的手段に出ることも可能ですが弁護士費用もかかりますので、初期段階では管理会社に督促や取り立てを依頼する方がよいでしょう。なお、一括借り上げをして転貸(サブリース)するリロケーション会社の場合は滞納があっても家賃は保証されます。
リロケーション物件では家賃滞納リスクも考慮が必要です。リスク軽減には、保証会社の利用が有効であり、家賃滞納時には保証会社が支払いを肩代わりしてくれるため、安定した収入が確保できます。信頼性の高い入居者を選定することも重要で、リロケーション会社では法人契約や審査基準を厳格化している場合もあります。さらに、管理会社が入居者と定期的にコミュニケーションをとることで早期に問題を察知し、速やかに対応できるようになります。
リロケーションは人が住むことで物件の劣化を抑える効果があるのですが、逆に損傷してしまうリスクも存在します。
入居者の使い方が乱暴だったり、ペット禁止にも関わらず勝手にペットを飼って汚したり傷つけたりといった可能性が考えられます。入居者が必ずしも家を大事に思いながら住んでくれるとは限りません。借主側の意識としては賃貸の感覚のため、家から退去するときクリーニングをすれば良いと思い、部屋に対して雑な扱いをしてしまう人も少なくないです。
実際に、家の返却時に汚れや損傷などの修繕費用について借主と貸主のどちらが負担するかのトラブルになり、裁判にまで発展してしまった事例が多発しています。そうした事態を踏まえて国土交通省からガイドラインが作成されています。「通常の範囲の磨耗」の場合、基本的に借主には修繕の義務は発生しません。借主の故意による過失、損傷の場合にのみ借主が修繕費用を負担するというのが、主なガイドラインの内容です。
国土交通省のガイドラインによる「通常の範囲の磨耗」 |
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入居者退去時のハウスクリーニングも、貸主の負担とすることが、ガイドラインには定められています。基本的には貸主側の負担が多いように考えられているのです。借主が退去したあとに自分が住むためには、自らが修繕費用を負担してハウスクリーニングや壁紙や床の張り替えを行うリスクが生じることを頭に入れておきましょう。
対応策としては曖昧な契約を避け禁止事項を明確にすること。また、リロケーション会社の審査方法などを事前に確認して優良な入居者を獲得できるかを判断することです。リロケーション会社によっては修理・修繕費用の一部を負担してくれたり、フォローしてくれるところもあるので確認しておくと良いでしょう。
リロケーションでは入居者が頻繁に入れ替わるため、物件が損傷を受けるリスクも伴います。契約時に物件の取り扱いについて細かく規定し、ペット不可や喫煙禁止などの条件を設定することで損傷リスクを抑えます。また、入居者に損害保険や火災保険の加入を義務付けることで、万が一の損害が生じた際も保険による補填が可能です。さらに、退去時の原状回復について契約に明記し、管理会社による定期的な清掃や点検サービスを利用することで物件価値の維持に努めましょう。
また、入居者によるトラブル防止には、契約内容の明確化と物件管理の徹底が重要です。通常の賃貸契約とは異なるリロケーションの契約ルールや退去時の原状回復について明確に説明し、借り手に認識してもらうことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。また、管理会社が物件を定期的に巡回し、物件の状態を確認することも効果的です。退去時に必要な清掃や修繕について、契約時に具体的に取り決めることで、スムーズな対応が可能となります。
リロケーションでは賃貸期間が最初から決まっているのが条件となるため、借り手からするとずっと住み続けられないというマイナス面があります。そのため、同じタイプの物件でも周辺よりも家賃を低く設定するのが基本です。
数年間しか住めない家というデメリットを持つリロケーション物件と、契約更新ができる普通の賃貸物件を比べた場合、ほとんどの人は契約期間が定められていない長く住める家を選択するでしょう。エリアの賃料相場よりも安くなければ借主が現れにくいのです。目安としては、2年契約のリロケーション物件で周辺相場より20-30%安く設定するのがおすすめです。
リロケーション物件は、通常の賃貸市場と異なり家賃が低めに設定されることが多いため、利回りが想定を下回る可能性があります。このリスクに対処するには、物件の付加価値を高める工夫が有効です。例えば、家具や家電付きで提供するほか、ターゲット層に合わせた物件のリフォームも利回り向上に役立ちます。また、長期入居者向けに家賃割引を提供するなど、安定した収益を確保するための契約条件の工夫も検討すべきポイントです。
オーナーとしては管理料の他に固定資産税やローンの残債を支払わなければなりませんので、家賃が安くなればそれだけ収益率も低くなります。家賃を上げるためには家具付き物件にするなど付加価値を高める努力が必要。付加価値を生み出しながら、収益と支出のバランスを考えて家賃設定をすることが重要なポイントとなります。