リロケーションとは
転勤などの理由で一時的に長期留守にする自宅を、期間限定で賃貸に出すことを「リロケーション」と言います。リロケーション会社に賃貸借契約や入居者対応などの管理を委託することで、手間なく家賃収入が得られる画期的な空家活用法です。
ここではリロケーションを行う際に知っておくべき法律知識と税金の支払いについて解説しています。
リロケーションでは入居者と定期借家契約を結びます。これは一般的な賃貸契約とは違い、貸主が定めた契約期間が満了すると入居者と貸主の双方の合意が無い限り、契約の更新ができないというものです。
2000年に借地借家法が改正されて定期借家権が認められため、これに基いた賃貸契約ができるようになったのです。但し、貸主(オーナー)として注意しなければならない点があります。
1年以上の定期借家契約を結んだ場合、貸主は入居者に対し期間が満了する1年前から6カ月前までに契約が終了することを通知しなければなりません。これを怠って通知が遅れてしまった場合は、その日から6ヶ月間は入居者が住み続けることができるようになります。
また中途解約については住居の床面積が200平方メートル未満の場合に限り、入居者が転勤や親族の介護などやむを得ない事情によって住めなくなった時に、入居者側から契約解除の申し入れができるようになっています。
床面積が200平方メートル以上の物件で定期借家契約をした場合は、期間中の中途解約ができるという特約を定めておかないと、入居者は契約を途中で解除することはできなくなります。
リロケーションは期間は限定されていると言っても、その間は自宅を賃貸に出して家賃収入を得る不動産経営の1つと考えられます。
従ってサラリーマンで会社勤めをしていたとしても、不動産収入に対する所得税を支払うために確定申告をする必要があります。
所得税は不動産収入から必要経費を引いた不動産所得に対して課税されますので、何が必要経費になるかをしっかり把握しておかなければなりません。
具体的にリロケーションの必要経費として認められるのは管理手数料、固定資産税、都市計画税、減価償却費、修繕費、火災・地震保険料です。これらをきちんと整理しておかないと所得税が減額できないので注意が必要です。
この他に気をつけたいこととして住宅ローン減税があります。住宅ローン減税は物件に住むことが条件となっているため、リロケーションで賃貸に出している期間は適用されません。
賃貸契約が終了して再び自宅に戻り住み始めた時点で、その後の適用申請ができるようになりますので、詳細に関してはリロケーション会社や税務署に直接確認しておいた方がよいでしょう。
自宅をリロケーションしている人の多くは会社員など本業を持っていますから、年に一度の確定申告の時期になっても「きちんと給与所得は確定申告している」と油断しがちです。しかし忘れてならないのは、リロケーションも納税の対象になっているということ。リロケーションで得られる家賃収入は立派な「所得」ですから、これにかかる税金を申告しなければ申告漏れとなり、追徴課税を支払わなくてはならなくなってしまいます。
せっかくリロケーションしているのに、これでは利益が半減してしまいますから、こういった事態にならないためにもきちんと確定申告しておく必要があるのです。
リロケーションによる収入は「不動産所得」として扱われます。不動産所得とは毎年1月1日~12月31日までのその不動産による収入の総合計から不動産運営に関係する必要経費を差し引い金額のことで、ここに税金がかかるわけです。
従って、不動産所得(リロケーション所得)の計算式は、
「年間収入(家賃+共益費+礼金+駐車場料金etc)-実質経費(固定資産税+都市計画税+管理費+保障費+修繕費+火災保険料etc)-税務上の必要経費(減価償却費+専従者給与etc)=不動産所得」
となります。日本においては所得税は総合課税が原則となりますから、給与所得等と合算した金額を申告する必要があります。
また確定申告には「青色申告」と「白色申告」があり、更に青色申告には「10万円控除」と「65万円控除」とがあります。この呼び方は申告用紙の1枚目の紙の色から来ている俗語で法律上の正式な呼び名ではありませんが、一般に「青色申告は複雑」というイメージが定着しているようです。
確かに青色申告は予め税務署の承認が必要ですし、「現金出納帳」や「仕分帳」などの必要書類を簿記のルールに則って作成しなければなりませんが、前述の通り10万円あるいは65万円の控除を受けられるため、不動産所得のある人には断然こちらがおすすめです。
例えば不動産による年間収入が150万円、必要経費が50万円であった場合、白色申告であれば不動産所得は150万-50万=100万円。しかし65万円控除の青色所得であれば150万-50万-65万=35万円。不動産所得は35万円となり、かなりの額を節税できるわけです。
リロケーションの確定申告では、以下のものを経費項目に挙げることができるため、忘れず計上し損のないようにしましょう。
資産を使用することによって少しずつ消耗していく部分を経費として計上することができます。一定額以上の資産に関しては毎年一定の金額を計上しますが、安い資産に関しては特例が設けられているためそれぞれの金額に準じて計上しましょう。
例えば10万円未満のものについては購入年に全額経費として計上できますし、10万~20万円未満のものに関しては購入年から3年にかけて均等に割った金額を計上できます。また20万~30万円未満のものは青色申告であれば年間300万円までの範囲で一括計上できます。
リロケーション会社に管理費やその手数料として支払う費用です。マンションなどであれば修繕積立金なども管理費のうちに含まれます。
物件そのものやその設備を修繕するためにかかる費用のことで、メンテナンスやリフォームなども含まれます。
大抵の場合自然災害や火災など、不動産運営につきもののリスク対策として火災保険や地震保険などに加入しているはずですが、これらの保険料も各年で経費として計上できます。
リロケーションによる貸付業務に関係した税務上の経費が、租税公課です。これには固定資産税や不動産取得税、登録免許税、印紙税などが含まれます。
それでは具体的に、どのように確定申告を行えば良いかを見ていきましょう。
青色申告をしたい場合、その該当年の3月15日までに国税庁に承認申請書を提出します。申請書は国税庁のホームページからダウンロードできます。
国税庁のホームページから確定申告書や青色申告決算書をダウンロードしカラープリンターで出力するか、直接税務署や市町村役場の税務課に行って申告書用紙を受け取ることができます。また税務署から郵送で取り寄せるという方法もあります。
青色申告書は4枚、確定申告書Bは2枚あります。書き方に関しては分かりやすく説明しているサイトも多いので、調べてみると良いでしょう。
青色申告決算書と確定申告書Bに加え、源泉徴収票や社会保険料控除証明書など必要書類があればその原本も添付して提出します。税務署の窓口に直接持って行っても良いですし、郵送という方法もあります。